花を見に

大旦那「玄白翁、足はくたびれはせぬかヱ」
玄白翁「イイヱいナ足には年は取らせませぬ」
大旦那「梅と違ごうて、桜は何となしザワザワとせわしなうていかぬ」
玄白翁「此よりあつちの方へ回りますると、八重や型の変わったもんがごわります」
大旦那「ホナ向こうの方を見て帰ることにいたしませう」
玄白翁「モシ旦那、あすこで藝妓やらを集めて踊つてゐのはお宅の番頭はんでハ」
旦那「何を云ふのぢや、ウチの治兵衛があの半分の真似でもしてくれれば何云ふことやある。アレはまるで日増しの焼餅。今日もウチの若い連中に小言を云ふてゐるのを聞けば『藝妓といふ粉は煮て喰ふのか、太鼓持ちといふ餅は焼ひて喰ふのか』アホなこと言うてある。あないなものを見たらば目をまわしおります」
玄白翁「イイヱあれはお宅の治兵衛どんに間違いおまへぬ」
大旦那「玄白翁、だいぶとお眼がいかぬとみえる。デハひとつ眼鏡をかけて、似たお方の顔を拝ましてもらお。オオ玄白さんアリャ治兵衛」
玄白翁「違いごあはん」
大旦那「何じゃやら芸妓も太鼓も丸呑みぢやないか、えらいことな今更あと戻りもでけぬし、こんなところへ顔見せてやるのも可哀相ぢやて」
玄白翁「あのそばを抜けて通つたらどうでごわります」
大旦那「そうでもしませう」

番頭照れさしたらいかぬと云ふので、そつと脇の方からすり抜けようとする。向こうがこつちへ来るとこつちの方からそつとそばを、ところが酒飲みと云ふやつは嫌がつてるといふのが分かるものなれば、こつち来たらこつち、こつち行たらこつち。

番頭「サア逃がさんぞ、サアサア」
大旦那「何をするのぢや、ちやつとこりや人違いぢや」
番頭「逃がすものかい、サハサハこつちへ来い。ソレソレ捕まえた。こっちへ出て来い。」
大旦那「コレコレ堪忍。」
番頭「何が堪忍、茂八か、一八か、どいつぢや。オオこれハこれハ、旦さんでごわりますかいな、長らくご無沙汰を致しております。承りますれば、お店も日夜ご繁昌やそうで。」
大旦那「何を言ふてなさる、年寄りをつかまえてニワカの相手をさすのは殺生ぢや、べべが汚れる、お手を上げなされ。皆様方コレはウチの大事の番頭さんぢやによつてケガをささぬやうに遊ばしてやって下されヤ、ご如才もあろまいが、夕景はちやつと早よう帰してやっていただきますやうにお願いいたしますぞヱ、玄白さん行こか汗かかしよったナ」

おなじみ上方噺の名作『百年目』のヒトコマです。

所用ついでに大川は桜宮を散策すれば、ついついこの情景が浮かんできました。
桜になれば思う事ながら、満開の桜の下で、花見弁当に、花見酒、船遊びに、芸妓太鼓を引き連れて「目んない千鳥」いっぺんで良いから、そんな事がしてみたい。。。。。

さくらさくら
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2010-04-09 Fri 12:38 ∧top | under∨
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